【「生まれてこなければよかった」は最終警告?】息子がうつ病・PTSDになるまでのサイン④

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ハチコの「しくじり」ポイント: 深刻なサインを見て見ぬ振り


子どものうつ病は、大人のうつ病の症状の共通しているものが多いですが、実際よりも自分を低く評価したり、自分には存在する価値がないという考え方に陥りやすいという特徴もしかりです。

子どもが「自分なんていなくてもいい」「生まれてこなければよかった」などと訴えることは、大人の「罪悪感」「自責の念」「自殺願望」などにも通じる心の病気の深刻なサインと言えます。

そのため、こうした兆候が見られた場合には、心のエネルギーが枯渇しているため、とにかくまずはじっくりと休養させてあげることが大切です。

息子がこの発言をした後に、私は息子をディズニーランドに連れていったり、夏のキャンプの手配をして「楽しみだね」と伝えたりしていますが、この時の息子に必要だったのはそうした瞬間的な余暇やイベントではありませんでした。

強制的な学業や習い事などを休ませてあげるなどの、もっと長期的で抜本的な対策や休養が必要だったのです。

現実から目をそらしていた毒親の大罪

これまで書いてきたとおり、息子がうつ病などの心の病を発症するまでには、ずいぶんと長い時間をかけて、さまざまなサインが出されていたことがわかります。

その中には、今になって冷静に思い返せば心の病気のサインだとも思えるけど、あの時気付くことができなかったのはしかたがないかな〜と感じるものもあります。
ま、そう思いたいだけかもしれませんが…。

でも、実は、息子は誰にでもわかる最もわかりやすい言葉で、私にSOSを出したことがありました。

「おかあさん、ぼく、生まれてこなければよかった」と。

前回よりも、少し時期は戻りますが、塾に通い始めてから1カ月ほど経った3年生の3月のことです。

2014年3月22日(土)

朝「今日の予定はどうするの?」と聞いたらキレて○○が大泣きする。さらに、午前中に計算問題でずっと止まっているので、ぼーっとしていることを指摘するとまた怒りはじめる。
その後、理科のアドバイスをしたところで怒り、もっと丁寧にやりたいから邪魔するなと言ってくるが、まったく進まない。

言い争いになって怒鳴ったら、○○が「ぼく、生まれてこなければよかった」と言った。そんなことを言うのは初めてで、一瞬ドキッとしたが、上目使いでこちらをチラチラみながら、反応を試しているような雰囲気だったのでたぶん本気ではなさそう。
「どうしてそんなことを言うの?」「本当にそう思うの?」と聞いたら黙っていたけど、たぶんテレビかなにかで聞いた言葉を真似している感じだった。「おかあさんは○○が生まれてきてくれてうれしかったよ」と言い返すと、特にもうあまり気にしていないような様子だった。

(中省略)

少し怒るのをやめて、なんとか我慢して、距離をおいたりしながら言い争いをやめないといけないと思う。

子育て日記にはこんなふうに書き残されていましたが、私は本当は「子どもにこんなことを言わせてしまった、どうしよう」と血の気がひく思いをしたはずです。

ただ、そのことをあまり書かずに、「おおごと」ではないんだと自分にも言い聞かせようとしている感じでした。

「生まれてこなければよかった」は本気か?

実際、今でも、息子がその言葉を言った時の表情もシチュエーションも頭から離れません。

そして、息子のが心の病気だとわかってからは、何度もこの日のことを思い出しました。

もちろん、この時にはもうすでに息子の心には幼少期から刻まれた深い傷があって、「はい!今日から大丈夫」といったように簡単に戻ることはできなかったと思います。

まだ、状況もあまり悪くなっていなかった3月のできごと。

あの時なら、まだなんとかなったのではないかと。

そして今でも「この日に戻ってやリ直したい。この時すぐに息子を全てから解放してあげれば、あんな酷いことにはならなかった」と思っています。

おそらく、息子はこの時、本気で「ぼく、生まれてこなければよかった」と言ったのでしょう。

もちろん、ドラマか映画かなにかで聞いた言葉だったとは思いますが、それを真似して私を試してみようという気持ちではなく、本当の心のSOSを出していたのだと思います。


この言葉を聞いても、後戻りせずに突き進んでいた私は、いったいどこへ向かいたかったのでしょう。

息子の心と体の健康以外に、欲しいものなんて何もないことになぜ気付くことができなかったのでしょう。

そして、これでも気づいてくれない、自分を助けてくれない母親に、息子は知らず知らずの間にきっと絶望していったのでしょうか。

このあと、だんだんとエネルギーもなくなり、ブレーキがかからなくなり、息子の心と体は大きく壊れていってしまうのです。

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